
猛暑日や厳寒期に突然エアコンが動かなくなると、私たちの生活は一変してしまいます。特に、急なトラブルに見舞われた時、「故障だろうか?」「修理にはどれくらいかかるのだろう?」といった不安に襲われることでしょう。しかし、その不調が必ずしも深刻な故障とは限りません。ちょっとした確認や簡単な対処で解決するケースも少なくないのです。このガイドでは、エアコンの不調を感じた際にまず確認すべきポイントから、症状別の具体的な対処法までを詳しく解説します。
エアコンの故障を疑う前に!まず確認すべきチェックポイント
エアコンの「故障かな?」と感じた時、すぐに業者に連絡する前に、まずはご自身で簡単に確認できるポイントがいくつかあります。多くの場合、これらのチェックで問題が特定でき、ご自身で解決できる可能性もあります。
電源とリモコンの確認

エアコンが全く動かない場合、まずは基本的な電源周りを確認しましょう。電源プラグがコンセントにしっかり差し込まれているか、そして消費電力が大きいため落ちやすいブレーカーが「オフ」になっていないかを確認します。また、意外と多いのがリモコンの電池切れや、意図しない運転モード・温度・タイマー設定になっているケースです。
室外機の状態確認

室外機の周辺環境はエアコンの性能に直結します。吸込口や吹出口が植木鉢やゴミなどで塞がれていないか確認してください。空気の流れが妨げられると、熱交換の効率が落ちてしまいます。また、ファンにビニール袋などの異物が挟まっていないかも目視でチェックしましょう。異音や故障の原因となります。
フィルターの汚れ具合

フィルターのホコリ詰まりは、冷暖房効率の低下、電気代の高騰、故障リスクの増大という多くの不具合を引き起こします。フィルターを取り外し、ホコリが詰まっていないか確認してください。2週間に一度の清掃が理想的です。
症状別!エアコン不調の具体的な原因と対処法
エアコンの基本的なチェックポイントを確認しても症状が改善しない場合や、より具体的な不調が見られる場合、それぞれに特定の原因が潜んでいる可能性があります。放置すると、より大きな故障に繋がったり、生活に支障をきたしたりすることもあります。ここでは、エアコンの代表的な不調を症状ごとに分類し、考えられる原因とご自身でできる対処法、そして専門家へ依頼すべきケースを詳しく解説します。
冷えない・暖まらない時の原因と対処法
エアコンの最も基本的な機能である冷暖房が効かないという症状は、特に夏場や冬場には深刻な問題です。考えられる原因は多岐にわたりますが、慌てずに一つずつ確認していきましょう。
フィルターの目詰まり
最も頻繁に見られる原因です。フィルターがホコリで完全に目詰まりすると、室内機が空気を取り込めなくなり、熱交換の効率が著しく低下します。これにより、風量は出るものの冷えなかったり、暖まらなかったりします。多くの場合、フィルターを丁寧に取り外して清掃し、しっかりと乾燥させてから元に戻すだけで劇的に改善します。
ガス不足(冷媒ガス漏れ)
エアコンは「冷媒ガス」が室内機と室外機の間を循環することで熱を移動させています。このガスが何らかの原因で漏れて不足すると、熱を運ぶ能力が失われ、冷暖房が全く効かなくなります。ガス漏れは設置時の施工不良や、長年の使用による配管の腐食・損傷が主な原因です。ガスの補充や漏洩箇所の特定・修理は専門資格と特殊な工具が必要なため、必ず専門業者に依頼してください。
室外機の不具合
室外機のファンが回っていない、コンプレッサー(圧縮機)から「ブーン」という重い異音がする、といった場合は室外機自体に問題がある可能性が高いです。室外機が正常に機能しないと熱交換が行えないため、室内機が正常でも冷暖房は機能しません。こちらも専門業者による点検・修理が必要です。
霜取り運転中(暖房時)
冬場に暖房運転をしていると、室外機に霜が付着することがあります。エアコンはこれを検知すると、一時的に暖房を停止し、霜を溶かすための「霜取り運転」を自動的に開始します。この間は温風が出なくなりますが、数分から十数分で自動的に暖房運転に復帰します。故障ではないため、しばらく様子を見てください。
エコ運転・節電モード
省エネを目的としたモードが設定されていると、電力消費を抑えるために能力が制限されることがあります。そのため、設定温度に達するまでに時間がかかったり、最大能力が発揮されなかったりします。一度これらのモードを解除し、通常運転で効果を試してみてください。
水漏れがする時の原因と対処法
室内機から水が垂れてくるトラブルは、放置すると床や壁を傷めるだけでなく、カビの発生による健康被害や、漏電による火災のリスクもあるため、早急な対処が求められます。
ドレンホースの詰まり
冷房運転時に発生する結露水は、ドレンホースという管を通じて屋外へ排出されます。このホースの排出口にホコリや泥、虫などが詰まると、行き場を失った水が逆流し、室内機から溢れ出てきます。市販のドレンホースクリーナー(サクションポンプ)を使ったり、掃除機で吸い出したりすることで解決できる場合があります。
ドレンホースの破損・勾配不良
ホースが途中で折れ曲がっていたり、上向きになっていたりすると、水がスムーズに流れません。また、経年劣化によるホースの破損も原因となります。ホースの状態を目視で確認し、異常があれば業者による交換や再設置が必要です。
本体の傾き
エアコン本体が壁に対して水平に設置されていない場合、結露水を受け止める内部の皿(ドレンパン)から水が偏ってしまい、低い方から溢れ出てくることがあります。この場合は、専門業者による設置修正が必要です。
異音・異臭がする時の原因と対処法
普段と違う音や臭いは、エアコンからの異常を知らせるサインです。原因によっては健康被害や重大な故障に繋がるため、注意深く観察しましょう。
異音
•「カタカタ」「ガラガラ」
フィルターや前面パネル、風向きを調整するルーバーなどが正しく取り付けられていない場合に発生しやすい音です。一度取り外して、再度しっかりと装着し直してみてください。
•「ブーン」「キーン」
室外機のファンモーターやコンプレッサーの不具合・劣化が考えられます。放置すると故障が悪化する可能性があるため、専門業者に点検を依頼しましょう。
•「ポコポコ」
気密性の高い部屋で換気扇を回した際などに、外との気圧差でドレンホースから外気が逆流して発生する音です。多くは故障ではなく、窓を少し開けて換気することで収まります。
異臭
•カビ臭い
エアコン内部の熱交換器やファンにカビが繁殖している証拠です。これはアレルギーの原因にもなるため、プロによる分解洗浄が必要です。
•焦げ臭い
非常に危険なサインです。電気系統のショートや部品の過熱が原因と考えられ、火災に繋がる恐れがあります。直ちに運転を停止し、コンセントを抜くかブレーカーを落としてから、速やかに専門業者に連絡してください。
•生臭い・下水のような臭い
ドレンホースが排水溝や下水管の近くにあり、そこから臭いが逆流している可能性があります。
電源が入らない・すぐに止まる時の原因と対処法
タイマー設定
「切タイマー」が設定されていると、指定した時間で運転が停止します。リモコンでタイマー設定がされていないか確認し、解除してください。
リモコンの不具合
電池切れや故障で、リモコンからの信号が本体に届いていないことがあります。新しい電池に交換したり、スマートフォンのカメラで赤外線信号が出ているかを確認したりしてみましょう。
保護装置の作動
フィルターの目詰まりや室外機周辺の障害物によって内部が高温になるなど、本体に異常な負荷がかかると、故障を防ぐための保護装置が作動して運転を自動停止することがあります。原因を取り除き、しばらく時間をおいてから再試行してみてください。
基盤の故障
上記のいずれにも当てはまらない場合、エアコンの頭脳である電子基盤が故障している可能性があります。この修理は専門業者でなければ行えません。
自分で解決できない場合の対処法と修理・買い替えの目安
様々な対処法を試しても改善しない場合や、焦げ臭い匂いなど危険を感じる場合は、無理せず専門業者に依頼しましょう。特に、冷媒ガス漏れや電気系統のトラブル、内部部品の物理的な破損は、専門知識と技術がなければ対処できません。修理か買い替えかで迷った際は、使用年数が一つの基準となります。エアコンの設計上の標準使用期間は約10年です。購入から7~8年以上経過している場合、修理費用が高額になるなら、省エネ性能が向上した新しいモデルへの買い替えが長期的に見て経済的です。また、修理見積もりが新品購入費用の半分を超える場合も、買い替えを検討する良い機会と言えるでしょう。まずは保証期間内かどうかを保証書で確認することも忘れないようにしてください。
エアコンの故障を防ぐための日頃のケア
故障のリスクを減らし、エアコンを長持ちさせるためには、日頃のケアが不可欠です。2週間に一度のフィルター清掃は、効率維持と故障予防に最も効果的です。また、室外機の周りに物を置かず、風通しを良く保つことも重要です。さらに、年に1回程度は専門業者による内部の分解洗浄を行うことで、カビやホコリを根本から除去し、常に快適でクリーンな状態を保つことができます。日頃の小さな心がけが、大きなトラブルを防ぎます。
まとめ
エアコンの不調は生活に大きな影響を与えますが、まずは慌てずに基本的なチェックポイントを確認しましょう。電源、リモコン、室外機、フィルターの簡単な確認で解決することも多いです。ご自身での対処が難しい場合や、焦げ臭い異臭などの危険な兆候があれば、迷わず専門業者へ連絡を。無理な自己修理はかえってリスクを高めます。日頃からの適切なケアと、いざという時の冷静な判断が、エアコンを長く快適に使い続けるための秘訣です。